005 『友をもてなす茶会の巻』
春芳・周天・茄言 三吟歌仙
『友をもてなす茶会の巻』
《初折 表》
冬 ① 抹茶点て友をもてなす霜夜かな 春芳
冬 ② 挿すは小庭のさざんか一輪 周天
雑 ③ 朝の陽に山鮮やかに照らされて 茄言
雑 ④ ゴルフコースで仰ぐ青空 春芳
秋・月 ⑤ ハロウィンにホールインワン望の月 周天
秋 ⑥ 夢の軌跡を描く秋風 茄言
《初折 裏》
秋 ⑦ 眠れずに乗り出すベンツ虫騒ぐ 春芳
恋 ⑧ 浜辺で踊るジルバつれなく 周天
恋 ⑨ 沈む日に出会いの頃をたぐる時 茄言
恋 ⑩ 忘れられない悲しい瞳 春芳
雑 ⑪ 慕われて惜しまれつつも店じまい 周天
雑 ⑫ 俺がミシュラン五つ星付け 茄言
夏・月 ⑬ 浜スターさらばラミレス夏の月 春芳
夏 ⑭ すててこ似合う変なおじさん 周天
雑 ⑮ コロナ禍でマスクに帽子生きやすく 茄言
雑 ⑯ 銃を掲げて笑むテロリスト 春芳
春・花 ⑰ 花映すツインタワーに佇んで 周天
春 ⑱ 香りも乗せて陽炎揺れる 茄言
《名残折表》
春 ⑲ 春雨に次第に煙る真行寺 春芳
雑 ⑳ 心の疲れ癒やされるひと 周天
雑 ㉑ 老庭師松の手入れをせずに逝く 茄言
冬 ㉒ 見よう見まねで立つ冬の朝 春芳
恋 ㉓ 舞い姿指先の反りこまやかに 周天
恋 ㉔ 惹かれる心笑みでいなされ 茄言
恋 ㉕ 惜別の眼差し交わし去る同期 春芳
雑 ㉖ パジャマで参加リモート飲み会 周天
秋・月 ㉗ いつもなら家路を照らす月寂し 茄言
秋 ㉘ 律の調べを聞くシェアハウス 春芳
秋 ㉙ 猪を仕留めて次へ笹の中 周天
雑 ㉚ 船に流せば大海(おおみ)に届く 茄言
《名残折裏》
雑 ㉛ 渚にて口から漏れるセレナーデ 春芳
雑 ㉜ 工場群の夜景きらめき 周天
雑 ㉝ 灯(ひ)の下に地上の星の男達 茄言
春 ㉞ 春のショールで装う女工 春芳
春・花 ㉟ すりガラス花の影絵を揺れ写す 茄言
春 ㊱ 暮れなずむ空思い果てなく 周天
自 令和二年 十一月 一日
至 同 十一月 九日