056『庭を彩る月夜の巻』
春芳・茄言・周天三吟歌仙56
『庭を彩る月夜の巻』
《初折表》
秋・月 ① 古民家の庭を彩る月夜かな 春芳
秋 ② カフェの香りをのせて秋風 茄言
秋 ③ 美術展今年限りと覚悟して 周天
雑 ④ アートワークでイラスト描く 春芳
雑 ⑤ 隠し絵に謎とく鍵があると去り 茄言
雑 ⑥ 遺言執行までの確執 周天
《初折裏》
⑦ 亡き母の思い出胸に夏の海 春芳
恋 ⑧ 告白せかす寄せる波音 茄言
恋 ⑨ 貝殻に似てると耳をなぞられて 周天
恋 ⑩ かつて夢見た甘い生活 春芳
雑 ⑪ スイーツの糖質ゼロに罪薄く 茄言
雑 ⑫ メダル目前減量に泣く 周天
冬・月 ⑬ 見上げればエッフェル塔に冴ゆる月 春芳
冬 ⑭ 敗者を癒やす冬の星々 茄言
雑 ⑮ カセットのたるみをペンで巻き上げて 周天
雑 ⑯ 静かなる雨ショパンの調べ 春芳
春・花 ⑰ ワルツ舞う花散る道を一人占め 茄言
春 ⑱ 仔馬は跳ねて右に左に 周天
《名残折表》
春 ⑲ カンザスの大草原に春の風 春芳
雑 ⑳ ハーレー駆ってデンバー目指す 茄言
恋 ㉑ サイドカー亜麻色の髪なびかせて 周天
恋 ㉒ 抱かれて眠る愛のひととき 春芳
恋 ㉓ 傍らの寝息に過ぎし日々思う 茄言
雑 ㉔ ナイトキャップで弱る肝臓 周天
雑 ㉕ ジャズバーで安田南を聞く夕べ 春芳
雑 ㉖ アコギで語る歌はプカプカ 茄言
秋・月 ㉗ 赤錆の運河に月の影にじむ 周天
秋 ㉘ かりがね寒き海沿いの道 春芳
秋 ㉙ いつからか秋刀魚競る声短くて 茄言
秋 ㉚ 台風進路予想裏切る 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 東北へリュック背負って一人旅 春芳
雑 ㉜ わらの河童と肩組む遠野 茄言
雑 ㉝ 三陸に思いを繋ぐリアス線 周天
雑 ㉞ 海のはじまり図書で調べて 春芳
春・花 ㉟ ひと知らぬ谷にも花の咲き初(そ)めて 周天
春 ㊱ 光りて躍る風の祝福 茄言
自 令和六年八月 七日
至 同 八月十四日