044 『風の詩聴く一夜の巻』
春芳・茄言・周天三吟歌仙44
『風の詩聴く一夜の巻』
《初折表》
春 ① 暖かな風の詩聴く一夜かな 春芳
春 ② 朝陽に赤い椿見た夢 茄言
春 ③ 球春に早くも快音響かせて 周天
雑 ④ ブンブン丸で釣りに出る日々 春芳
秋・月 ⑤ 豊漁を拝めど月は聞いたふり 茄言
秋 ⑥ 運動会は村の楽しみ 周天
《初折裏》
秋 ⑦ 三色の小旗を濡らす秋時雨 春芳
恋 ⑧ 海辺にルノー止めて二人に 茄言
恋 ⑨ 接吻の像を真似しておずおずと 周天
夏・恋 ⑩ 腰に切れ込むビキニをなでて 春芳
雑 ⑪ アラジンのランプが欲しい試験前 茄言
雑 ⑫ 天神様に絵馬を結んで 周天
冬・月 ⑬ テキサスの牧場照らす冬の月 春芳
冬 ⑭ 暖炉の前でカントリー弾く 茄言
雑 ⑮ 煙突の掃除屋うたう屋根の上 周天
雑 ⑯ 居間のピアノで奏でるドレミ 周天
春・花 ⑰ 花の香に風のメロディーささやかれ 茄言
春 ⑱ リズム刻んで蝶は舞い飛ぶ 周天
《名残折表》
春 ⑲ 麗らかな日差しを受けて行く山路 春芳
雑 ⑳ 土産背負って父ちゃん帰る 茄言
恋 ㉑ 耳元で女将のうたう子守唄 周天
恋 ㉒ 次第に迫る濡れた欲情 春芳
恋 ㉓ 目覚めればこれで最後と置き手紙 茄言
雑 ㉔ 飛騨の匠の門をたたいて 周天
雑 ㉕ 高原のホテルのバーで飲むワイン 春芳
冬 ㉖ 昴を探す冬の星空 茄言
冬・月 ㉗ 寒月の荒野に一人我は行く 周天
雑 ㉘ 用心棒に守られながら 春芳
雑 ㉙ 天災の予兆嗅ぎ取る野性の血 茄言
雑 ㉚ デマは飛び交う今も昔も 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 国会の答弁聞いて嫌気さし 春芳
雑 ㉜ 語らぬ亀に語り餌をまく 茄言
雑 ㉝ 竜宮はここか束の間別天地 周天
春 ㉞ 卒業迎え新たな暮らし 春芳
春・花 ㉟ 江戸城も上野の山も花名所 周天
春 ㊱ 日本橋から仰ぐ初虹 茄言
自令和五年 二月四日
至 同 二月九日