三吟歌仙         

030 『黄金の香りの巻』

           周天・春芳・茄言 三吟歌仙㉚

 

            『黄金の香りの巻』           

 

《初折 表》

冬    ① 黄金の香りまとうや冬至の湯        周天 

冬    ②  オリオン見上げ憂う行く末        春芳 

雑    ③ 棒に聞く三十郎の歩く先          茄言 

雑    ④  楊枝くわえて目つき鋭く         周天 

秋・月  ⑤ 三日月にno more cryと誓う夜        春芳 

秋    ⑥  足取り軽く尾花を揺らす         茄言 

《初折 裏》

秋    ⑦ 鹿の鳴く山にポツンと一軒家        周天 

恋    ⑧  ヒマラヤ杉にもたれるふたり       春芳 

恋    ⑨ さえずりに今とせかされ腕を引き      茄言 

恋    ⑩  時間よ止まれロダンのごとく       周天 

雑    ⑪ 幻の絵画を求めフランスへ         春芳 

雑    ⑫  モンマルトルに一人佇む         茄言 

夏・月  ⑬ 熱こもる洗濯船に月涼し          周天 

雑    ⑭  夜の果てまで語り尽くして        春芳 

雑    ⑮ 暗闇に大使のビザが差す光         茄言 

雑    ⑯  国の出入りは今も昔も          周天 

春・花  ⑰ 風誘う花の名残の華やかさ         春芳 

春    ⑱  鬼の平蔵霞に消えて           茄言

 

《名残折表》 

春    ⑲ 「播磨屋!」と大向こうから春舞台     周天 

春    ⑳  門出に歌うよさこい節を         春芳 

雑    ㉑ 桂浜志士が眺める海の果て         茄言 

恋    ㉒  好いた御方と薩摩の湯宿         周天 

恋    ㉓ 切れ長の細い目尻にキュンとなり      春芳 

夏・恋  ㉔  浴衣姿の香りに火照る          茄言 

雑    ㉕ 気に入りのジーパンだけで押し通し     周天 

雑    ㉖  得意先へと紺のスーツで         春芳 

秋・月  ㉗ 月見上げ母ちゃん褒めてくれるかな     茄言 

秋    ㉘  本家に柿のたわわなる頃         周天 

秋    ㉙ 空耳か笛の音聞こえ秋の庭         春芳 

雑    ㉚  大捕物が江戸の闇裂く          茄言 

 

《名残折裏》

雑    ㉛ 牢屋から与力の町へ日比谷線        周天 

雑    ㉜  小塚原にて首をはねられ         春芳 

雑    ㉝ リストラと言われて遊ぶ神楽坂       茄言 

春    ㉞  朧夜人目しのぶ待合           周天 

春・花  ㉟ 床の間の花一輪の夢枕           茄言 

春    ㊱  薄紅色の春は優しく           春芳

 

自 令和三年 十二月 二十二日

至   同  十二月 二十七日