057『葉ごとの白露の巻』(四吟)
周天・茄言・春芳・飛鳶四吟歌仙
三山連句会第57巻
『葉ごとの白露の巻』
《初折表》
秋 ① 白露の葉ごとに珠(たま)を結びけり 周天
秋・月 ② 閉じ込めたのは月夜の光り 茄言
秋 ③ 雲走る色なき風に流されて 春芳
雑 ④ 住み慣れてはや半世紀経ち 飛鳶
雑 ⑤ 国じゅうが50・50に喝采し 茄言
雑 ⑥ リハビリメニューこなす毎日 周天
《初折裏》
夏 ⑦ ナイスデイ二人で猛暑克服し 飛鳶
夏・恋 ⑧ 君と過ごした思い出の夏 春芳
夏・恋 ⑨ チアガール灼けた素肌を惜しげなく 周天
恋 ⑩ サヨナラに肩抱いて引き寄せ 茄言
雑 ⑪ 軽トラに荷物を積んで去る下宿 春芳
春 ⑫ 桜吹雪に酔う大学生 飛鳶
春・月 ⑬ 子は巣立ち二人見上げる春の月 茄言
春 ⑭ 駅のホームに燕飛び交い 周天
春 ⑮ 赴任校田圃の中に新しく 飛鳶
雑 ⑯ そびえるタワーここは横浜 春芳
夏・花 ⑰ 客船の窓に花火の色映えて 周天
雑 ⑱ 艫(とも)で引き波消える先追う 茄言
《名残折表》
雑 ⑲ 渚にて海のはじまり思うとき 春芳
夏 ⑳ 遙か彼方に氷河崩れる 飛鳶
雑 ㉑ 核心部抜けて破顔のクライマー 茄言
恋 ㉒ 言葉とぎれて見つめ合うまま 周天
恋 ㉓ じっとしてただ温かくときめいて 飛鳶
恋 ㉔ セピアカラーのアルバムの女(ひと) 春芳
雑 ㉕ 生前葬新たに写真撮り直し 周天
雑 ㉖ 行司泣かせの同体裁き 茄言
秋・月 ㉗ 障子開け月の光で指す将棋 春芳
秋 ㉘ 草むらで鳴く蟋蟀の声 飛鳶
秋 ㉙ コスモスの迷路出られずべそをかき 茄言
雑 ㉚ 「はて?」と止(とど)まる勇気教わる 周天
《名残折裏》
冬 ㉛ 雪原に行方失い穴を掘る 飛鳶
雑 ㉜ 不明者リスト雨の爪痕 春芳
雑 ㉝ 新総裁防災省の設置説き 周天
春 ㉞ 霞む先には凪の海無し 茄言
春・花 ㉟ 花の下酔って平安祈るのみ 飛鳶
春 ㊱ 会社を辞して麗らかな日々 春芳
自 令和六年九月二十二日
至 同 九月二十八日