三吟歌仙         

036 『白木蓮のしるべの巻』

          周天・春芳・茄言三吟歌仙36
           『白木蓮のしるべの巻』


《初折表》
春    ①  木蓮の白をしるべに今日の道     周天

春    ②   外套脱いで歩くビル街       春芳

春    ③  鹿威し椿の庭にこだまして      茄言

雑    ④   経費で落とす晩餐の味       周天

秋・月  ⑤  今は亡き母の庵を照らす月      春芳

秋    ⑥   三畳一間新そばが来る       茄言

《初折裏》
秋    ⑦  日展にまたも敢えなく轟沈し     周天

雑    ⑧   闇夜に響くミサイルの音      春芳

雑    ⑨  先見えぬ今を伝えるスマホの目    茄言

恋    ⑩   マスクはずしてそっとささやく   周天

夏・恋  ⑪  ミスキャンと映画見に行く夏の夜   春芳

恋    ⑫   包む余韻にまたと約束       茄言

冬・月  ⑬  昇進に気持ち緩めず冬の月      周天

雑    ⑭   年甲斐もなく張り切る老爺     春芳

雑    ⑮  不死求めシルクロードを奥地まで   茄言

雑    ⑯   火の鳥の首捉えそこなう      周天

春・花  ⑰  花の散る慌ただしさは我に似て    春芳

春    ⑱   節目の春を幾度越えたか      茄言

《名残折表》
春    ⑲  去る者は追わず霞の中に消え     周天

雑    ⑳   雨の街角アムステルダム      春芳

恋    ㉑  運河沿い手をあげ二人走り寄る    茄言

恋    ㉒   木靴で背伸び頬に口づけ      周天

恋    ㉓  許してと軋むベッドで乞う女     春芳

雑    ㉔   眠りを覚ます震度六強       茄言

雑    ㉕  思い出の扉次々開き始め       周天

雑    ㉖   過失を悔やみ先を憂える      春芳

秋・月  ㉗  クレーターそこかしこにも涼し月   茄言

秋    ㉘   溶岩流もすすきの原に       周天

秋    ㉙  キラウエア火口を覗く秋の旅     春芳

雑    ㉚   ガラパゴスにてヒトは種と知る   茄言

《名残折裏》
雑    ㉛  イグアナの真似でタモリは這い上がり 周天

雑    ㉜   テレビクルーも皆大笑い      春芳

雑    ㉝  草むしりはしゃいで帰る子らの声   茄言

春    ㉞   もうひと遊び日暮れ遅きに     周天

春・花  ㉟  街眠り花も宴で戯れて        茄言

春    ㊱   色とりどりに陽春の園       春芳

自令和四年三月二十一日
至  同 三月二十七日