058『紅色かんざし実南天の巻』
茄言・周天・春芳三吟歌仙５８
『紅色かんざし実南天の巻』
《初折表》
冬 ① 井戸端に紅かんざしや実南天 茄言
冬 ② しぐれにしめり帯びた粧い 周天
雑 ③ 通り雨大樹の陰に身を寄せて 春芳
雑 ④ 落人の里ツアーコースに 茄言
秋・月 ⑤ 西海の月に都の日々しのぶ 周天
秋 ⑥ 読書に耽る仲秋の夜 春芳
《初折裏》
秋 ⑦ 傍らの切子に注ぐ今年酒 茄言
恋 ⑧ 薩摩おごじょの強きまなざし 周天
恋 ⑨ 海峡の光を浴びて笑む女神 春芳
恋 ⑩ 思いの渦に引き込まれゆく 茄言
雑 ⑪ メジャーへの壁こじ開けてトルネード 周天
雑 ⑫ 今や伝説鉄腕稲尾 春芳
夏・月 ⑬ 勝ち負けも雲に隠れて夏の月 茄言
夏 ⑭ 祭のあとの余韻楽しむ 周天
雑 ⑮ 満天の星を眺めて歌詞を書く 春芳
雑 ⑯ 幼子あやす母を思いて 茄言
春・花 ⑰ マドンナの寺院を包む花の舞 周天
春 ⑱ タイで過ごした麗らかな日々 春芳
《名残折表》
春 ⑲ 無事祈る戦場記者の帰る春 茄言
雑 ⑳ 和平に至るルート描けず 周天
雑 ㉑ 連立の未知の力に期待して 春芳
恋 ㉒ 二人の出会い結ぶ赤糸 茄言
恋 ㉓ グラドルの髪が身体に絡みつき 周天
恋 ㉔ 心に眠る思い出の女(ひと) 春芳
冬 ㉕ 夜行バス秋田の朝は雪景色 茄言
冬 ㉖ しょっつる鍋の椀の温もり 周天
冬・月 ㉗ 見上げれば研ぎ澄まされた冬の月 春芳
雑 ㉘ 晴れ間に遠く富士を指さす 茄言
雑 ㉙ ガイジンの弾丸登山に網をかけ 周天
雑 ㉚ 漁船の先に豪華客船 春芳
《名残折裏》
雑 ㉛ 高級魚どや顔見せて競りに出し 茄言
雑 ㉜ 寿司職人の冴えた手さばき 周天
雑 ㉝ トランプのカードをめくる占い師 春芳
春 ㉞ 霞が隠す読めぬ道行く 茄言
春・花 ㉟ 大学を去る友の背に花吹雪 春芳
春 ㊱ 風やわらかな故郷(ふるさと)の街 周天
自令和六年十一月七日
至 同 十一月十三日