三吟歌仙         

038 『水面彩る紫陽花の巻』

        春芳・茄言・周天三吟歌仙38
                『水面彩る紫陽花の巻』


《初折表》
夏    ①紫陽花が水面彩る岸辺かな        春芳

夏    ②夕立くるか円の紋様           茄言

雑    ③小刀で鉛筆の芯尖らせて         周天

雑    ④時を忘れて机に向かう          春芳

秋・月  ⑤月の浜砂の踏み音聞きにゆく       茄言

秋    ⑥新酒酌むべき友の家まで         周天

《初折裏》
秋    ⑦行く道に他に人無く秋の暮れ       春芳

雑    ⑧熊鈴かすか風が届けて          茄言

恋    ⑨阿寒湖に踊るメノコを忘れかね      周天

恋    ⑩北の国から旅立つ二人          春芳

恋    ⑪思川見下ろす部屋で肩を寄せ       茄言

雑    ⑫杉の並木にしばしやすらぐ        周天

冬・月  ⑬裏窓を開けて仰ぐは冬の月        春芳

冬    ⑭大オリオンに合格祈る          茄言

雑    ⑮菅公が笠松奥に鎮座して         周天

雑    ⑯我が物顔で生える雑草          春芳

春・花  ⑰花の名を問われて言えぬ口惜しさ     茄言

春    ⑱わすれなぐさに責め立てられて      周天

《名残折表》
春    ⑲麗らかな日差しを浴びてシャンゼリゼ   春芳

雑    ⑳プジョーが揺らすマロニエ並木      茄言

雑    ㉑博愛と自由とどまる崖っぷち       周天

雑    ㉒平和になると浅き夢見し         春芳

恋    ㉓穏やかに二人で過ごす無二の時      茄言

恋    ㉔観客席で手と手重ねる          周天

恋    ㉕街角で出会った女に一目惚れ       春芳

雑    ㉖リスク抱えてポーチに出るか       茄言

秋・月  ㉗汝(なれ)もまた跳ねて遊ばん月兎     周天

秋    ㉘かりがね寒き草原に立つ         春芳

秋    ㉙からすみを肴にしてと急ぐ帰路      茄言

雑    ㉚やるだけやれた自分に褒美        周天

《名残折裏》
雑    ㉛無礼なる部下は手当てに文句たれ     春芳

雑    ㉜泣く子も黙るデータ分析         茄言

雑    ㉝吠え叫びフライボールを連発し      周天

春    ㉞チャイナタウンの冴え返る朝       春芳

春・花  ㉟花フェスタ銅鑼の音ひびく港町      周天

春    ㊱祝い風船空に放たれ           茄言

      自令和四年五月 五日
      至 同  五月十一日