018 『冴えわたる夜の書斎の巻』
周天・春芳・茄言 三吟歌仙⑱
『冴えわたる夜の書斎の巻』
《初折 表》
冬 ① しんしんと冴えわたる夜や我が書斎 周天
冬 ② ストーブつけて向かうパソコン 春芳
雑 ③ 情報の網に絡まり日々過ぎて 茄言
雑 ④ 海辺間近に借りた別荘 周天
秋・月 ⑤ 湘南で月を背にして立つ文士 春芳
秋 ⑥ 身にしむ風に次作湧き出る 茄言
《初折 裏》
秋 ⑦ 迷鳥に己が姿を重ね見て 周天
恋 ⑧ ひとり旅して未練断ち切り 春芳
恋 ⑨ 衝動で消した履歴を悔やむ時 茄言
恋 ⑩ 肌にくっきり跡をとどめる 周天
雑 ⑪ クルーズで立ち寄る港ロシュフォール 春芳
雑 ⑫ 赤いシトロでツールドたどる 茄言
冬・月 ⑬ アミアンの聖母マリアに冬の月 周天
冬 ⑭ 輝きながら踊る粉雪 春芳
雑 ⑮ 親木からもっと遠くと翼果飛び 茄言
雑 ⑯ ジブリ映画を創る二代目 周天
春・花 ⑰ 物の怪が住むと言われる花屋敷 春芳
春 ⑱ 霞にゆらりぽんぽこ化ける 茄言
《名残折表》
春 ⑲ たらの芽を揚げて山盛り腹鼓 周天
雑 ⑳ リズムに合わせブレイクダンス 春芳
恋 ㉑ 踊らされ遊ばれたのに魅せられて 茄言
恋 ㉒ ボディタッチを腰へ胸へと 周天
夏・恋 ㉓ 黒髪にハイビスカスを差す女 春芳
雑 ㉔ おとり捜査で巨悪突き止め 茄言
雑 ㉕ 熱狂の一夜は明けてラスベガス 周天
雑 ㉖ 午後の相場でギャンブル仕掛け 春芳
秋・月 ㉗ 罠抜けず月夜に響く鹿の声 茄言
秋 ㉘ シートンに泣く読書週間 周天
秋 ㉙ 秋の雲眼下に一望ANAの窓 春芳
雑 ㉚ 泡立つ生の絹の喉ごし 茄言
《名残折裏》
雑 ㉛ 定宿に悪党たちが顔揃え 周天
雑 ㉜ コロナ対策語り尽くして 春芳
雑 ㉝ 雑草が我関せずと覆う庭 茄言
春 ㉞ 見慣れぬぶちの子猫現る 周天
春・花 ㉟ 花揺らし花の迷路ではしゃぐ声 茄言
春 ㊱ 三山の里に響く春雷 春芳
自 令和三年 六月 二十一日
至 同 六月 二十六日