三吟歌仙         

034 『舞落ち消える名残雪の巻』

         茄言・周天・春芳三吟歌仙34
             『舞落ち消える名残雪の巻』


《初折表》
春     ① 名残雪舞楽しみて落ちて消え     茄言

春     ②  潤んで土の匂う畦道        周天

春     ③ 陽炎に揺れる湖畔を散歩して     春芳

雑     ④  サイクリストの荒い息過ぎ     茄言

秋・月   ⑤ 銀輪の月を頂く観覧車        周天

秋     ⑥  二百十日のイネ倒す風       春芳


《初折裏》
秋     ⑦ 襟立てて夜寒に一人帰る部屋     茄言

雑     ⑧  ダルマ叶わずホワイトを飲む    周天

雑     ⑨ 酔い深く目覚ましベルを夢で聞く   春芳

恋     ⑩  勇んで告げてふられて泣いて    茄言

恋     ⑪ 傷心を癒やす受け口京言葉      周天

恋     ⑫  カルチェラタンで交わすくちづけ  春芳

夏・月   ⑬ 論文に詰まり見上げる涼し月     茄言

夏     ⑭  蛍の軌跡たどる残像        周天

雑     ⑮ ドブ川をさかのぼりつつ清流へ    春芳

雑     ⑯  万年雪の滴飲み干す        茄言

春・花   ⑰ 連山の湛える水に花の影       周天

春     ⑱  波光の果てを海猫渡る       春芳


《名残折表》
春     ⑲ 命継ぐ雛抱く親に春の風       茄言

雑     ⑳  糞をひり出し力みなぎる      周天

雑     ㉑ 部下のミス心静かに尻拭い      春芳

雑     ㉒  大震災のいつか起きる日      茄言

恋     ㉓ 約束の定時メールは欠かさずに    周天

冬・恋   ㉔  イブにデートでFallinlove      春芳

恋     ㉕ フラメンコ踊りたくなる手の温み   茄言

雑     ㉖  アルハンブラに入り日見つめて   周天

秋・月   ㉗ 縁側に差し込む月に杯ひかり     春芳

秋     ㉘  肴リッチに松茸焼いて       茄言

秋     ㉙ 火を熾す忘れ団扇の歌麿絵      周天

雑     ㉚  浮世のつらさ味わう老後      春芳


《名残折裏》
雑     ㉛ いくさ場を切り抜けどこへ一人旅   茄言

雑     ㉜  寄る先々にうまいものあり     周天

雑     ㉝ 客を見てゼロを付け足す老舗バー   春芳

春     ㉞  醒めてたどるも霞に消えて     茄言

春・花   ㉟ 幾重にも枝走り居り花の中      春芳

春     ㊱  上へ下へと蝌蚪(かと)の戯れ    周天

      自令和四年二月十九日
      至 同  二月二十四日