007 『風に舞い立つ枯落葉の巻』
茄言・春芳・周天 三吟歌仙
『風に舞い立つ枯落葉の巻』
《初折 表》
冬 ① 枯れ落葉舞い踊らせて車風 茄言
冬 ② 寒気染み入る朝の街道 春芳
雑 ③ 通勤の早起き癖が抜けなくて 周天
雑 ④ 珈琲香る時を味わう 茄言
秋・月 ⑤ 天空に定かにはまる今日の月 春芳
秋 ⑥ 剣に映る光冷やか 周天
《初折 裏》
秋 ⑦ 秋刀魚より鰯料理に妻の味 茄言
雑 ⑧ 釣り人集う伊豆の沿岸 春芳
恋 ⑨ 断ち切れぬ思いを胸に天城越え 周天
恋 ⑩ あの人の住む街の灯眺む 茄言
恋 ⑪ 盲目の少女を癒やす浮浪の士 春芳
雑 ⑫ 殺風景な部屋にポスター 周天
夏・月 ⑬ 熱帯夜涼し月見る網戸越し 茄言
夏 ⑭ 浴衣姿で指すヘボ将棋 春芳
雑 ⑮ しばし無言友の消息伝え聞き 周天
雑 ⑯ 重なる山並み常より淡く 茄言
春・花 ⑰ 歌声に残雪消えて花の宴 春芳
春 ⑱ ひばり啼く音に憩うひととき 周天
《名残折表》
春 ⑲ 見る夢は皆で乾杯春の宵 茄言
雑 ⑳ 演技指導もマスク姿で 春芳
冬 ㉑ 喜びの歌も響かぬ年の暮れ 周天
雑 ㉒ ベルリンの朝石の道踏む 茄言
恋 ㉓ 舞姫の影を宿して行く旅路 春芳
恋 ㉔ 仲を隔てる壁にたたずみ 周天
恋 ㉕ 焦がす胸出逢いしことに仕舞い閉じ 茄言
雑 ㉖ 道頓堀を離れる小舟 春芳
秋・月 ㉗ 鹿苑寺月にまばゆく照りまさり 周天
秋 ㉘ 茂る萩間に甲冑の音 茄言
秋 ㉙ 撮影に向かう坂道秋の風 春芳
雑 ㉚ 己が技量の試される時 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 松山の一朶の雲に子規浮かぶ 茄言
雑 ㉜ 短くもなお美しく燃え 春芳
雑 ㉝ 国境を跨ぎ聖火に集い来て 周天
春 ㉞ 汗輝けと春光構え 茄言
春・花 ㉟ 先陣を競い出でゆく花の門 周天
春 ㊱ されど我らが麗らかな日々 春芳
自 令和二年 十二月 二十一日
至 同 十二月 二十七日