032 『冬陽差し込む木立の巻』
春芳・茄言・周天 三吟歌仙32
『冬陽差し込む木立の巻』
《初折 表》
冬 ① 美しく冬陽差し込む木立かな 春芳
冬 ② 霜踏む音にはしゃぐ幼子 茄言
雑 ③ 連弾のピアノにしばし酔い痴れて 周天
雑 ④ サッチモの声響くジャズバー 春芳
秋・月 ⑤ これからを知るのか寂と浮かぶ月 茄言
秋 ⑥ 環状線に群れる椋鳥 周天
《初折 裏》
秋 ⑦ 秋の夜スカイラインで大阪へ 春芳
恋 ⑧ グリコの前で二人手を上げ 茄言
恋 ⑨ このまんま一緒に逃げてと迫る女 周天
恋 ⑩ 愛の妖精実は小悪魔 春芳
雑 ⑪ 危うさに引き寄せられて難ルート 茄言
雑 ⑫ ネパールの地にぶらり降り立ち 周天
夏・月 ⑬ 草原の旅人照らす夏の月 春芳
雑 ⑭ ショービジネスの疲れ癒やして 茄言
雑 ⑮ 久々の連ドラ茶の間にぎわわせ 周天
雑 ⑯ あれよあれよと進むおはなし 春芳
春・花 ⑰ 爛漫の春告げ登る花の旅 茄言
春 ⑱ 架橋に岸の青む学び舎 周天
《名残折表》
春 ⑲ 廃校のテニスコートに風光る 春芳
雑 ⑳ 主将はパリで寿司バー開く 茄言
雑 ㉑ ボルドーのグラス傾け今宵また 周天
恋 ㉒ 水のほとりで亜麻色の夢 春芳
冬・恋 ㉓ 白鳥の降り立つ岸で思い告げ 茄言
冬・恋 ㉔ 永遠誓うオリオンの下 周天
雑 ㉕ コロナ禍で夜空見上げてつく吐息 春芳
雑 ㉖ 無縁坂聴き日記書き終え 茄言
秋・月 ㉗ 谷根千を歩く足先月明かり 周天
秋 ㉘ 色なき風を胸にひそめて 春芳
秋 ㉙ 秋空を独り占めする雲ひとつ 茄言
雑 ㉚ 権力抗争頂点に立つ 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 派閥変え果つる底なき出世欲 春芳
雑 ㉜ 渦中にあれば皿まで食らい 茄言
雑 ㉝ 高笑い大物揚げし大間崎 周天
春 ㉞ 波静かなる麗しき海 春芳
春・花 ㉟ 遅咲きの花満開の国技館 周天
春 ㊱ 墨田の川に渡る春風 茄言
自 令和四年 一月 二十日
至 同 一月 二十五日