031 『里包む初空の巻』
茄言・春芳・周天 三吟歌仙31
『里包む初空の巻』
《初折 表》
新年 ① 初空や冷気をつれて里包む 茄言
新年 ② 賀状受け取り微笑む老爺 春芳
雑 ③ QRコードで動画見せられて 周天
雑 ④ 展覧会の絵に魅せられる 茄言
秋・月 ⑤ 静寂と光溢れるフルムーン 春芳
秋 ⑥ 雁鳴く声のそぞろなつかし 周天
《初折 裏》
秋 ⑦ 七輪を扇ぎ秋刀魚を焼いた頃 茄言
雑 ⑧ 長屋小路に煙たなびき 春芳
恋 ⑨ 掃き溜めに鶴とうわさの若女房 周天
恋 ⑩ 笑顔開運僕のあげまん 茄言
恋 ⑪ あざやかな君の仕草が夢に舞う 春芳
雑 ⑫ 三保の松波とおき船音 周天
夏・月 ⑬ 夏の月凪の漁場に顔写す 茄言
雑 ⑭ 釣り具片手にフィヨルドの海 春芳
雑 ⑮ 晩餐のタイタニックに迫る影 周天
雑 ⑯ SOSが闇夜震わす 茄言
春・花 ⑰ うすべにの帯と見紛う花筏 春芳
春 ⑱ 弘前城に燕飛び来て 周天
《名残折表》
春 ⑲ ウィニングボール掴むと誓う春 茄言
雑 ⑳ 怠りのない守備を支えに 春芳
雑 ㉑ 五時からの仕事しばしば午前様 周天
恋 ㉒ 「チンして食べて」メモにハートが 茄言
恋 ㉓ 今宵また思い出酒に酔うばかり 春芳
恋 ㉔ ふたり頬寄せ指はVの字 周天
雑 ㉕ 連綿とコロラド川が削る谷 茄言
冬 ㉖ コート羽織ってレッドロックへ 春芳
冬・月 ㉗ 手詰まりの稼業投げ出し冬の月 周天
雑 ㉘ 苦し紛れの一打逆転 茄言
雑 ㉙ 王将戦盤上見つめ賭けに出る 春芳
雑 ㉚ 金四枚振り遊ぶ双六 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 久しぶり袖を揺らしてハイタッチ 茄言
雑 ㉜ アメリカ橋でその後別れて 春芳
雑 ㉝ 門出にはエビスでちょっと贅沢を 周天
春 ㉞ キレとコクとに喉は麗らか 茄言
春・花 ㉟ 振り仰ぐ空一面に花の雲 周天
春 ㊱ そよ吹く風に春の足音 春芳
自 令和四年 一月 五日
至 同 一月 十日