三吟歌仙         

053 『朝日に向かうつくしの巻』

春芳・周天・茄言三吟歌仙53
『朝日に向かうつくしの巻』

《初折表》
春   ①背を伸ばし朝日に向かうつくしかな    春芳

春   ②気まぐれな風吹かす佐保姫        周天

春   ③春祭り興に任せて輪に入って       茄言

雑   ④トイレ掃除は当番制で          春芳

秋・月 ⑤納得の一日終えて仰ぐ月         周天

秋   ⑥ひとり暮らしの母と行く盆        茄言

《初折裏》
秋   ⑦秋の暮れ寂しさ募るワンルーム      春芳

雑   ⑧指名手配の網を逃れて          周天

恋   ⑨歩くたび覗くタイツに心揺れ       茄言

夏・恋 ⑩セピア色した夏の日の恋         春芳

夏・恋 ⑪キャンプ場他校のひとと隣り合い     周天

雑   ⑫互いの推しを語り夜は更け        茄言

冬・月 ⑬パリの空白く輝く冬の月         春芳

雑   ⑭オルセーの絵の模写に明け暮れ      周天

雑   ⑮延々とレッドクレーのラリー戦      茄言

雑   ⑯泥を跳ね上げ走るマイカー        春芳

春・花 ⑰花の寺韋駄天像に祈り込め        周天

春   ⑱震災記憶巡る三月            茄言

《名残折表》
春   ⑲冴え返る能登半島の青い海        春芳

恋   ⑳九谷の土を細き腕(かいな)で       周天

恋   ㉑杯合わせ指先触れて加賀の夜       茄言

恋   ㉒微笑む君の頬にキスして         春芳

雑   ㉓若き日のポップスをふと口ずさむ     周天

雑   ㉔代々木10分三畳下宿          茄言

雑   ㉕その昔オリンピックの選手村       春芳

雑   ㉖聖火リレーを親に連れられ        周天

秋・月 ㉗月指して竹取話す帰り道         茄言

秋   ㉘捨て猫拾う錦秋の森           春芳

秋   ㉙団栗の落ちるをスーパーキャッチして   周天

雑   ㉚そうだ京都へ妻を誘って         茄言

《名残折裏》
雑   ㉛ストレスもオーシャンビューに癒やされる 春芳

冬   ㉜マッコウ鯨吹き上げる潮         周天

冬   ㉝氷原を包むオーロラ薄衣         茄言

雑   ㉞ひと口大のそぎ切りにして        春芳

春・花 ㉟花の舞う堀をかすめて皇居ラン      茄言

春   ㊱東御苑に蝶は群れ飛ぶ          周天

                          自令和六年  三月二十日
                          至   同     三月二十六日