024 『爽やかな木陰の談義の巻』
周天・春芳・茄言 三吟歌仙㉔
『爽やかな木陰の談義の巻』
《初折 表》
秋 ① 爽やかな木陰尽きせぬ談義かな 周天
秋 ② 律の風吹く午後の公園 春芳
秋・月 ③ 満月が芝生の影を尖らせて 茄言
雑 ④ ハイレゾ音を耳にジョギング 周天
雑 ⑤ タワマンで4Kテレビみる夕べ 春芳
雑 ⑥ コスメむなしく皺も鮮明 茄言
《初折 裏》
雑 ⑦ 漆喰の壁に左官の鏝(こて)冴えて 周天
雑 ⑧ これは珊瑚か江戸の簪 春芳
夏・恋 ⑨ 浴衣からこぼれる香り夏の宵 茄言
夏・恋 ⑩ 団扇で隠す上気した頬 周天
恋 ⑪ 束ね髪ふわり広げて誘う女 春芳
雑 ⑫ 羽根舞落ちてフォレストガンプ 茄言
冬・月 ⑬ 月光の森ふくろうの声響き 周天
冬 ⑭ 冬のソナタをソロで奏でて 春芳
冬 ⑮ 夜の雪知らずに眠り開ける窓 茄言
雑 ⑯ コルクの部屋で綴る長編 周天
春・花 ⑰ キャンパスに屋台を出して花祭り 春芳
春 ⑱ 海苔とソースの香りに染まる 茄言
《名残折表》
春 ⑲ 月島を汽船行き交い風光る 周天
雑 ⑳ デッキでひとりくゆらす葉巻 春芳
雑 ㉑ 政界を揺るがす記事を書き終えて 茄言
恋 ㉒ ピロートークが心くすぐり 周天
恋 ㉓ 金髪の青い目清しパリジェンヌ 春芳
恋 ㉔ つまずきそうな道で手を貸し 茄言
雑 ㉕ 警官にカルチェラタンの舗石投げ 周天
雑 ㉖ されどわれらが美しき日々 春芳
雑 ㉗ 海越えてブルジェ降り立つ単葉機 茄言
雑 ㉘ 千里の丘に縄文の塔 周天
秋・月 ㉙ メンフィスの遺跡を照らす満ちた月 春芳
秋 ㉚ 夜長スエズの座礁をググる 茄言
《名残折裏》
秋 ㉛ 肌寒き部屋にエチオピアの香り 周天
雑 ㉜ ラストソングはコーヒールンバ 春芳
雑 ㉝ 肩組んでもう一軒と友が言い 茄言
春 ㉞ 淡墨色に霞たなびく 周天
春・花 ㉟ 名も知らぬ我にも語る花一つ 茄言
春 ㊱ そよ吹く風に春の残り香 春芳
自 令和三年 九月 二十三日
至 同 九月 二十九日