049 『稲穂を渡る風の巻』
茄言・春芳・周天 三吟歌仙49
『稲穂を渡る風の巻』
《初折 表》
秋 ① 揺れ渡るたわわ稲穂に風の道 茄言
秋・月 ② 月に輝く里山の園 春芳
秋 ③ 廃線のバス停に鹿現れて 周天
雑 ④ 轍も消えた径の草食む 茄言
夏 ⑤ 指先でてんとう虫をつつく朝 春芳
夏 ⑥ 祭り広場に昭和の歌謡 周天
《初折 裏》
夏 ⑦ ミュンヘンで麦酒飲み干すテント村 茄言
恋 ⑧ 恋する女(ひと)と歌劇楽しむ 春芳
恋 ⑨ 街角の暗さに紛れ抱き寄せて 周天
恋 ⑩ 名を囁けば返す囁き 茄言
雑 ⑪ 気がつけば煉瓦造りのパリの家 春芳
雑 ⑫ ヴェルサイユにも英国の旗 周天
秋・月 ⑬ 噴水も眠る水面に月の顔 茄言
秋 ⑭ 空に横たふ天の川見ゆ 春芳
秋 ⑮ 大相撲星つぶし合う下剋上 周天
雑 ⑯ ノーサイドにも消せぬ悔しさ 茄言
春・花 ⑰ 称えあう戦士に向けて花吹雪 春芳
春 ⑱ 凱旋パレード風もやわらか 周天
《名残折表》
春 ⑲ 喝采に埋もれ木の芽も顔を出し 茄言
雑 ⑳ 泥の河にて友の名を呼ぶ 春芳
恋 ㉑ 少年の淡き思いを引きずって 周天
恋 ㉒ ポニーテイルの君に惹かれる 茄言
冬・恋 ㉓ 死のうかと囁かれしは雪の夜 春芳
冬・恋 ㉔ 角巻のなか隠す泣き顔 周天
雑 ㉕ 高座から笑い話の落ちをつけ 茄言
雑 ㉖ 今何時とレジで問う人 春芳
夏・月 ㉗ 覚めやらぬ夢か現か夏の月 周天
夏 ㉘ 滝落つ音が声に聞こえて 茄言
雑 ㉙ 安らぎと癒やしの効果モダンジャズ 春芳
雑 ㉚ 二十四時間ジムは盛況 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ いつでもと後に回してし忘れて 茄言
雑 ㉜ サプリ求めて彷徨い歩く 春芳
雑 ㉝ 分かれ道丁なら右と賽を振り 周天
春 ㉞ 行けばわかると霞の先へ 茄言
春・花 ㉟ 麗しき花をルーペで確かめる 周天
春 ㊱ 懐かしき日々春の足跡 春芳
自 令和五年 九月 二十三日
至 同 九月 二十七日