043 『初日待つ茜空の巻』
茄言・春芳・周天三吟歌仙43
『初日待つ茜空の巻』
《初折表》
新年 ① 初日待つ思い十色の茜空 茄言
新年 ② 誓い新たに飾る門松 春芳
冬 ③ 実南天縁起かついで玄関に 周天
雑 ④ 靴も揃えて出船の形 茄言
春・月 ⑤ クルーズで見上げる空に春の月 春芳
春 ⑥ カクテルグラス風やわらかに 周天
《初折裏》
春 ⑦ 氷解け光に跳ねて川となり 茄言
恋 ⑧ キャバ嬢連れてイグアスの滝 春芳
恋 ⑨ サッカーの熱に任せて抱きあえば 周天
恋 ⑩ 肌で伝わる二人の鼓動 茄言
夏 ⑪ 風鈴の鳴る音に合わせ手も震え 春芳
夏 ⑫ 金魚の動き飽かず眺める 周天
秋・月 ⑬ 満月に朽ち木が人に化ける道 茄言
秋 ⑭ 色なき風にささやく葉擦れ 春芳
秋 ⑮ 初物の柿をいただく垣根越し 周天
雑 ⑯ アーチ量産村神様に 茄言
春・花 ⑰ 球場へ向かう先々花盛り 春芳
春 ⑱ 燕飛来しペンは閃く 周天
《名残折表》
春 ⑲ 蜃気楼映すリアルを追い求め 茄言
雑 ⑳ リュック背負って北陸の旅 春芳
雑 ㉑ 「加賀鳶」を飲んで城下を闊歩する 周天
雑 ㉒ まよいの果てに行く永平寺 茄言
冬・恋 ㉓ くちびるを合わせて眠る雪の宿 春芳
恋 ㉔ 夜明けてもなお夢をむさぼり 周天
恋 ㉕ 香水で移り香隠すならぬ恋 茄言
雑 ㉖ 池上線に揺られてひとり 春芳
秋・月 ㉗ 残業に疲れとぼとぼ月の道 周天
秋 ㉘ マラソン人が芒なびかせ 茄言
秋 ㉙ 袖口の時計を濡らす秋時雨 春芳
雑 ㉚ 倍速視聴でタイパ高める 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 手で四角真似てアピール草野球 茄言
雑 ㉜ 戦力外を通告されて 春芳
雑 ㉝ 屋台引くスープの仕込み妥協なく 周天
春 ㉞ 渡すのれんの先に凧浮く 茄言
春・花 ㉟ 川べりに花回廊を一望し 周天
春 ㊱ 絵筆を握る麗らかな午後 春芳
自 令和五年 一月 六日
至 同 一月十一日