三吟歌仙         

042 『オリオン懸かれる道の巻』

       周天・春芳・茄言 三吟歌仙42
        『オリオン懸かれる道の巻』

 《初折 表》
冬   ① オリオンの懸かれる道や朝まだき      周天

冬   ②  枯れ野に響く星々の声          春芳

雑   ③ 目覚ましが夢の続きをかき消して      茄言

雑   ④  発車のベルにドアへ駆け込む       周天

秋・月 ⑤ 人生の月の満ち欠け胸に染む        春芳

秋   ⑥  祭りの後に光る朝露           茄言

 《初折 裏》

秋   ⑦ 言葉交わしされどめいめい秋遍路      周天

恋   ⑧  恋は仕勝ちと風がささやく        春芳

恋   ⑨ 立ち止まり影の重なる二人径        茄言

雑   ⑩  天体ショーの始まりの時         周天

雑   ⑪ マウナケア宇宙の果てを追い求め      春芳

雑   ⑫  きっと美し数式モデル          茄言

秋・月 ⑬ 公転と自転織りなす月出でて        周天

秋   ⑭  灯籠流しに集う人々           春芳

秋   ⑮ 亡き友を思い手酌の秋の宵         茄言

雑   ⑯  バルコニーから声は虚しく        周天

春・花 ⑰ 宴のあと眺むる森は花ざかり        春芳

春   ⑱  飛び交う蜂の羽音軽やか         茄言

  《名残折表》

春   ⑲ 若草の山に群れなす旅の客         周天

雑   ⑳  四人姉妹も笑みを浮かべて        春芳

雑   ㉑ 下駄の音を鳴らし嵯峨野の隠れ道      茄言

恋   ㉒  竹林の陰まずは手を触れ         周天
      
夏・恋 ㉓ 肩袖の小袖を濡らす送り梅雨        春芳

恋   ㉔  言わず見つめて共に寄り添い       茄言

雑   ㉕ 対角をよぎるボールにジャガー吠ゆ     周天

雑   ㉖  忘れられないドーハの悲劇          春芳
      
冬・月 ㉗ 不合格冬三日月を見上げた夜        茄言

冬   ㉘  雪の踏まれて滑る路地裏         周天

雑   ㉙ 四丁目賑わう店に夕日さす         春芳

雑   ㉚  腹巻き雪駄のフーテン帰る        茄言

  《名残折裏》

雑   ㉛ 裏方の技廃れゆく撮影所          周天

雑   ㉜  千年続く工匠の智恵           春芳

雑   ㉝ 遡上して産み終え果てて継ぐ命       茄言

春   ㉞  麦踏めば根は強く拡がり         周天

春・花 ㉟ 岩に咲く実生の花に励まされ               茄言

春   ㊱ 何やらゆかし残雪赤城           春芳

    自  令和四年 十一月 二十二日
    至   同   十一月 二十八日