021 『用水べりの朝顔の巻』
周天・茄言・春芳 三吟歌仙 ㉑
『用水べりの朝顔の巻』
《初折 表》
秋 ① 用水のへりに朝顔藍一輪 周天
秋 ② 揺れて教える秋のそよ風 茄言
秋・月 ③ 連作は月がテーマと心得て 春芳
雑 ④ 舶来インクを丸善で買う 周天
雑 ⑤ 古書店を巡り疲れて人の群れ 茄言
雑 ⑥ 若者たちは路上に集う 春芳
《初折 裏》
雑 ⑦ クラークの像も見守る大激走 周天
冬 ⑧ 冬のキャンパス雪の碑白く 茄言
恋 ⑨ 金髪の恋人訪ねシャンゼリゼ 春芳
恋 ⑩ オルセーの美もきみの脇役 周天
恋 ⑪ 裏路地に鼓動高鳴り抱き寄せて 茄言
雑 ⑫ エディット・ピアフ流れる夜に 春芳
夏・月 ⑬ 下積みの暮らしはかなく夏の月 周天
夏 ⑭ 鰻と見たて茄子の蒲焼き 茄言
雑 ⑮ 連休にグルメ気取って一人旅 春芳
雑 ⑯ 馬籠の宿で孤独に浸り 周天
春・花 ⑰ 行き先は地図に花びら落ちた場所 茄言
春 ⑱ 入学式で夢を語って 春芳
《名残折表》
春 ⑲ サークルの新歓コンパ空騒ぎ 周天
雑 ⑳ 夜の浜辺の波音静か 茄言
雑 ㉑ 海峡に昇る太陽旭日旗 春芳
恋 ㉒ 涙こらえて船出見送る 周天
恋 ㉓ 航跡に一夜の夢をのせて消し 茄言
恋 ㉔ 告る相手はミニスカセーラー 春芳
雑 ㉕ 制服のリカちゃん買うを拒否られて 周天
雑 ㉖ 鬼滅のフィギュア机上に飾る 茄言
雑 ㉗ つれづれに昔流行ったアニメ観て 春芳
雑 ㉘ 叩けば直るテレビの不調 周天
秋・月 ㉙ 足跡の残る月だと眺めた日 茄言
秋 ㉚ 一眼レフで捉える紅葉 春芳
《名残折裏》
秋 ㉛ 天高し渓流深く辿り来て 周天
雑 ㉜ 三筋の瀧は絶えず岩打つ 茄言
雑 ㉝ 取り敢えずここでキャンプと張るテント 春芳
春 ㉞ 雪解け水でスコッチを割り 周天
春・花 ㉟ 花浮かせグラス差し出すバーテンダー 春芳
春 ㊱ 春を寿ぐトリオの響き 茄言
自 令和三年 八月 七日
至 同 八月 十三日