040 『甘酒すする雷のあとの巻』
茄言・周天・春芳 三吟歌仙 40
『甘酒すする雷のあとの巻』
《初折 表》
夏 ① 雷過ぎて冷やし甘酒すすりけり 茄言
夏 ② しばし聞き入る軒の風鈴 周天
雑 ③ 眠れずに星々見上げ夜も更けて 春芳
雑 ④ 明日の解答約したからは 茄言
秋・月 ⑤ 古鏡のごとき湖面に月の影 周天
秋 ⑥ 色なき風を胸に潜めて 春芳
《初折 裏》
秋 ⑦ 霧の世にロックで去って何想う 茄言
雑 ⑧ 木を伐り倒し住み処一新 周天
恋 ⑨ 庭先に影重なりて甘い時 春芳
恋 ⑩ 君の香りに鼓動高まり 茄言
恋 ⑪ 胸押さえここがつらいと囁けば 周天
雑 ⑫ 響くラテン語司祭の祈り 春芳
秋・月 ⑬ 願かけに帰路を照らして月応え 茄言
秋 ⑭ 駅のホームにこおろぎの声 周天
秋 ⑮ スナックのママの手動き栗を剥き 春芳
雑 ⑯ 片町出れば古都の城跡 茄言
春・花 ⑰ 茶屋街に芸妓行き交う花宴 周天
春 ⑱ 残雪ゆかし高き峰々 春芳
《名残折表》
春 ⑲ 豊潤な春の湧水すくい飲み 茄言
雑 ⑳ 天下を獲れる手相見つめる 周天
雑 ㉑ 旅先のマカオで出会う占い師 春芳
雑 ㉒ 白か黒かとパンダが迫り 茄言
恋 ㉓ 世之介もついに年貢の納め時 周天
冬・恋 ㉔ 枯れ野と化した初めての恋 春芳
恋 ㉕ 潮騒に二人を隠す松探し 茄言
雑 ㉖ 伊良湖崎から目指すロケ先 周天
夏・月 ㉗ 金箔の舎利殿照らす夏の月 春芳
雑 ㉘ 若僧ひとり砂紋引く朝 茄言
雑 ㉙ 永遠をこの瞬間に閉じ込めて 周天
雑 ㉚ オールスターで決勝ホーマー 春芳
《名残折裏》
雑 ㉛ 手応えに大魚の予感足固め 茄言
雑 ㉜ 銘を刻んだ柳刃包丁 周天
雑 ㉝ 料亭の海鮮料理真似てみる 春芳
春 ㉞ 朧夜眺め酔いて語らん 茄言
春・花 ㉟ 薄紅の花に埋もれた我が庵 春芳
春 ㊱ 燕も朋も来る楽しさ 周天
自 令和四年 七月二十三日
至 同 七月二十八日