006 『影定かなる欅の巻』
周天・春芳・茄言 三吟歌仙
『影定かなる欅の巻』
《初折 表》
冬 ① 葉を落とし影定かなる欅かな 周天
冬 ② 夜霜踏みつつ行く並木道 春芳
雑 ③ 雲遙か浮かぶ宇宙船(そらふね)見澄まして 茄言
雑 ④ 酒と女で苦い世渡り 周天
秋・月 ⑤ 溜息を吐いて潤むは夜の月 春芳
秋 ⑥ おわらの盆の調べせつなく 茄言
《初折 裏》
秋 ⑦ 逃れ来て風の身に沁む北陸路 周天
雑 ⑧ 『武士の献立』観る昼下がり 春芳
雑 ⑨ はじめからBS火サスラスト見え 茄言
恋 ⑩ 眠りなさいと熱きその胸 周天
恋 ⑪ さりげなく腕を絡める共演者 春芳
恋 ⑫ 隠す恋慕を先に悟られ 茄言
冬・月 ⑬ 後手後手に回る日もあり冬の月 周天
冬 ⑭ 火鉢引き寄せ指す詰将棋 春芳
雑 ⑮ ひらめきも鈍刀なりし老いの影 茄言
雑 ⑯ 竜宮城を未だ忘れず 周天
春・花 ⑰ 靖国で花に見とれる老女優 春芳
春 ⑱ 武道館へと誘う春風 茄言
《名残折表》
春 ⑲ 夏隣打ち込み稽古の三四郎 周天
雑 ⑳ 倫敦塔で読む夢十夜 春芳
雑 ㉑ テームズの川面揺れる灯霊気満つ 茄言
恋 ㉒ パブで出逢いしマドンナを追い 周天
夏・恋 ㉓ アルバムにビキニ姿の夢の女(ひと) 春芳
夏・恋 ㉔ 木陰で光る君にときめく 茄言
雑 ㉕ けものみち罠を仕掛けてじっと待つ 周天
雑 ㉖ 眠れぬ夜に聴くキャンディーズ 春芳
秋・月 ㉗ 見上げれば微笑み返す月の顔 茄言
秋 ㉘ コスモス咲いてアンドゥトロワと 周天
秋 ㉙ 美樹ちゃんとグラス合わせる秋の宴 春芳
夏 ㉚ 朝日に映える虹に目覚めて 茄言
《名残折裏》
雑 ㉛ 七色のクレパス持って改札へ 周天
雑 ㉜ ダヴィンチ真似て描くモナリザ 春芳
雑 ㉝ 巡る地の人の優しさしみる旅 茄言
春 ㉞ 雪解け水にのどを潤す 周天
春・花 ㉟ 肩に落つ花にせかされ歩き出す 茄言
春 ㊱ 霞たなびく広瀬川沿い 春芳
自 令和二年 十一月 二十日
至 同 十一月 三十日