028 『落葉が透ける初氷の巻』
茄言・周天・春芳 三吟歌仙㉘
『落葉が透ける初氷の巻』
《初折 表》
冬 ① 初氷透けて重なる落葉かな 茄言
冬 ② 冬晴れの朝にじむ紅色 周天
雑 ③ 東武線終着駅で乗り換えて 春芳
雑 ④ 野音で一人ステージ眺む 茄言
秋・月 ⑤ 「がんばろう」月に向かいて拳突き 周天
秋 ⑥ 夜学に通う若き工員 春芳
《初折 裏》
秋 ⑦ 鍵締めて暗い校舎に流れ星 茄言
雑 ⑧ タイムカプセル明日は開ける日 周天
恋 ⑨ マドンナも今では孫を引き連れて 春芳
恋 ⑩ エンドロールで肩を抱き寄せ 茄言
恋 ⑪ 吊り橋に揺られて手と手結ばれる 周天
雑 ⑫ 絶景求めハルシュタットへ 春芳
夏・月 ⑬ 歌声が響く湖面に夏の月 茄言
夏 ⑭ ぼっちキャンプで垂らす釣り糸 周天
雑 ⑮ 今宵また星空見上げ手酌酒 春芳
雑 ⑯ ホームズ気取りパブで立ち飲み 茄言
春・花 ⑰ 優勝の歓喜を共に花の舞う 周天
春 ⑱ 語り継がれる春の選抜 春芳
《名残折表》
春 ⑲ のどかさにふと思い出すあの場面 茄言
雑 ⑳ ダブルカットで街路まぶしく 周天
雑 ㉑ 香港でカードマジック垣間見て 春芳
雑 ㉒ 石踏み登る長城果てなし 茄言
恋 ㉓ 微笑めば百媚生じる瞳あり 周天
冬・恋 ㉔ 情を切り裂く冬の稲妻 春芳
恋 ㉕ 帰らざる日々にも残る紅の味 茄言
雑 ㉖ 眠れぬ夜に遠く汽笛を 周天
秋・月 ㉗ 自転車で渡る踏切夕月夜 春芳
秋 ㉘ サイクロイドに帰燕飛ぶ線 茄言
秋 ㉙ 解決はまたも振り出し秋灯下 周天
雑 ㉚ 米軍去ってもとのもくあみ 春芳
《名残折裏》
雑 ㉛ 先見えぬ道に踏み跡残し行く 茄言
雑 ㉜ 四冠と書く文字は拙し 周天
雑 ㉝ 盤上に果てなき夢を追いかけて 春芳
春 ㉞ 空の風船指さす親子 茄言
春・花 ㉟ 室町を大河ドラマ化『花の乱』 春芳
春 ㊱ 国平らぎて曲水の宴 周天
自 令和三年 十一月 二十二日
至 同 十一月 二十七日