014 『清流に群れなす蛍の巻』
春芳・茄言・周天 三吟歌仙⑭
『清流に群れなす蛍の巻』
《初折 表》
夏 ① 清流の岸に群れなす蛍かな 春芳
夏 ② 遠くかすかに祭りの太鼓 茄言
雑 ③ 行列の通り過ぎるを目で追って 周天
雑 ④ ラーメン店で頼む味噌味 春芳
秋・月 ⑤ 双喜紋月のウサギも踊りだし 茄言
秋 ⑥ 尖りて光る鷹の爪干す 周天
《初折 裏》
秋 ⑦ 帯刀の後ろ姿に秋時雨 春芳
雑 ⑧ 煙る五稜に武士の果つる日 茄言
恋 ⑨ 仕官へと願をかけつつ手内職 周天
恋 ⑩ あなたと呼んだあの頃のこと 春芳
恋 ⑪ 二人道いのちの歌で振り返り 茄言
雑 ⑫ すれ違いざま歩み緩める 周天
冬 ⑬ ノクターン聴いて仰ぐは冬の月 春芳
冬 ⑭ ワルシャワ駅の春待つ調べ 茄言
雑 ⑮ 子犬連れマダムの足先軽やかに 周天
雑 ⑯ 凱旋門を横に見ながら 春芳
春・花 ⑰ 花踊るキューガーデンへ誘う道 茄言
春 ⑱ 北窓開き深呼吸する 周天
《名残折表》
春 ⑲ 暖かな居間で葉巻に火を付けて 春芳
雑 ⑳ 人の作ったモノに囲まれ 茄言
雑 ㉑ 蔵書すべて売った男の腰は抜け 周天
雑 ㉒ ラピスラズリの涙流して 春芳
恋 ㉓ 肩揺らす君うけとめてなでし髪 茄言
恋 ㉔ 卒業までは耐えて封印 周天
恋 ㉕ ジュテームと叫ぶ彼女に投げキッス 春芳
雑 ㉖ 社では非情な派遣切る顔 茄言
秋・月 ㉗ 離れ島月を頼りに獲物追う 周天
秋 ㉘ 白い浜辺に律の風吹く 春芳
秋 ㉙ 帆を上げて不知火めざす闇の海 茄言
雑 ㉚ 親父の形見の船でトカラに 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 災害をテーマに描くアニメーター 春芳
雑 ㉜ 一縷の望み土砂かき分けて 茄言
雑 ㉝ 徳川の埋蔵金は赤城嶺に 周天
春 ㉞ 覚満淵の魚氷に上がる 春芳
春・花 ㉟ あで姿花千本のすそ模様 周天
春 ㊱ 春の陽纏う頂仰ぐ 茄言
自 令和三年 四月 二十日
至 同 四月 二十五日