017 『色鮮やかな木立の巻』
春芳・周天・茄言 三吟歌仙⑰
『色鮮やかな木立の巻』
《初折 表》
夏 ① 新緑の色鮮やかな木立かな 春芳
夏 ② 風も涼しき沼べりの道 周天
夏 ③ 水芭蕉ついとすました顔をして 茄言
雑 ④ グラス片手に憩うひととき 春芳
秋・月 ⑤ 古き良き昭和の香り月天心 周天
秋 ⑥ 企業戦士の流星消える 茄言
《初折 裏》
秋 ⑦ TOB仕掛けて眠る秋の夜 春芳
雑 ⑧ 白馬ソダシの馬券舞い散る 周天
雑 ⑨ 純粋に輝く夢を夢で追い 茄言
恋 ⑩ 果つる底なき魔性の女 春芳
恋 ⑪ 始まりはおしゃれマスクを褒めたこと 周天
恋 ⑫ 膝上に揺れ香りに惑う 茄言
冬・月・恋 ⑬ 四畳半柔肌照らす冬の月 春芳
雑 ⑭ 髪結い上げて旅支度する 周天
雑 ⑮ 相棒は化石燃やして我が背押す 茄言
雑 ⑯ 心の中の神と獣と 春芳
春・花 ⑰ 身代を潰さんまでの花狂い 周天
春 ⑱ メビウス知らず霞む道行く 茄言
《名残折表》
春 ⑲ 麗しの妙なる港ハンブルグ 春芳
雑 ⑳ 旗艦三笠で横須賀バーガー 周天
雑 ㉑ 長旅に砲は外れて露と消え 茄言
雑 ㉒ 坂の上から望む落日 春芳
恋 ㉓ 二人して一番星に目を凝らし 周天
恋 ㉔ あそこと指して肩を抱き寄せ 茄言
恋 ㉕ 口元を小袖で隠し笑む娼妓 春芳
雑 ㉖ 狙い定める猫の素早さ 周天
秋・月 ㉗ 雲霧の盗み鮮やか月明かり 茄言
秋 ㉘ ライトノベルに一葉の紅葉 春芳
秋 ㉙ 長き夜昔語りのきりもなく 周天
雑 ㉚ 屋敷蛇にも父母の面影 茄言
《名残折裏》
雑 ㉛ 煙立ちほのかに匂う夕餉時 春芳
雑 ㉜ 姉ちゃん作る飯をかっ込む 周天
雑 ㉝ 大盛りの恩を返すと苦学生 茄言
春 ㉞ 紺のスーツで臨む卒業 春芳
春・花 ㉟ 花散るも花咲くときも道を踏み 茄言
春 ㊱ 雲翔け昇る青龍の意気 周天
自 令和三年 六月 五日
至 同 六月 十一日