020 『薫風にざざめく大樹の巻』
春芳・茄言・周天 三吟歌仙⑳
『薫風にざざめく大樹の巻』
《初折 表》
夏 ① 薫風に葉をざざめかす大樹かな 春芳
夏 ② 木漏れ日包む初夏に見る夢 茄言
雑 ③ 競艇の沼の堤に佇んで 周天
雑 ④ 見果てぬ想い白波に乗せ 春芳
秋・月 ⑤ 月仰ぎ次のツキ待つ帰り道 茄言
秋 ⑥ 居並ぶ蔵は豊作に満つ 周天
《初折 裏》
秋 ⑦ ブータンの棚田を濡らす秋時雨 春芳
雑 ⑧ 祈り捧げて命を継なぐ 茄言
恋 ⑨ 願い事この黒髪を切るほどの 周天
恋 ⑩ 流浪の末に築く愛の巣 春芳
恋 ⑪ 極上の幸せ紡ぐ時の糸 茄言
雑 ⑫ 経年変化のくすむ味わい 周天
冬・月 ⑬ リフォームのわが家を照らす冬の月 春芳
冬 ⑭ 鍋を囲んだ子らも子をもち 茄言
雑 ⑮ 利尻富士仰ぎ漁場(りようば)に向かう船 周天
雑 ⑯ アイヌの村で惰眠貪る 春芳
春・花 ⑰ 知らぬ間に花の刺繡の布肩に 茄言
春 ⑱ 神のお告げの鳥は囀り 周天
《名残折表》
春 ⑲ バチカンの教皇語るイースター 春芳
雑 ⑳ 過去閉じ込めた凍土消えつつ 茄言
雑 ㉑ ハイボール強炭酸の栓を抜き 周天
恋 ㉒ テーブル越しに笑う小悪魔 春芳
恋 ㉓ 内緒よと指立て見せて片えくぼ 茄言
恋 ㉔ 香る微かな変化嗅ぎ分け 周天
雑 ㉕ コロナ禍で客もまばらな中華店 春芳
雑 ㉖ 金の速報何かむなしく 茄言
秋・月 ㉗ 月光を浴びてタトゥーの浮かび出で 周天
秋 ㉘ 竜と紅葉の姐御の背中 春芳
秋 ㉙ 肌寒にヒートテックを買い求め 茄言
雑 ㉚ オジンオバンの集うユニクロ 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ カード見せ金ならあると豪語して 春芳
雑 ㉜ あの日に還る術(すべ)を問いかけ 茄言
雑 ㉝ あえて傘を持たずに濡れて雨やどり 周天
春 ㉞ 歩道に浮かぶ麗しき染み 春芳
春・花 ㉟ 花便り都会の絵具ちりばめて 周天
春 ㊱ 春を彩る三(み)つの原色 茄言
自 令和三年 七月二十二日
至 同 七月二十八日