022 『朝露に濡れる萩の道の巻』
茄言・周天・春芳 三吟歌仙㉒
『朝露に濡れる萩の道の巻』
《初折 表》
秋 ① 朝露に濡れて分け入る萩の道 茄言
秋 ② ふいに現る峰の小牡鹿 周天
秋・月 ③ 屋形船月は墨田と謡われて 春芳
雑 ④ 逆さツリーに三味の音渡る 茄言
雑 ⑤ フーテンの寅が門前通り抜け 周天
雑 ⑥ 旅の夜風に涙も乾き 春芳
《初折 裏》
雑 ⑦ 龍飛崎北の外れと口ずさむ 茄言
冬 ⑧ 函館本線窓に舞う雪 周天
冬・恋 ⑨ 海崖でオリオン指して笑む女 春芳
恋 ⑩ すばるを君のゆびで数えて 茄言
恋 ⑪ 首かしげ戸惑う姿隠し撮り 周天
雑 ⑫ スマホ片手に踊るツイスト 春芳
夏・月 ⑬ Tシャツを透かす汗にも涼し月 茄言
夏 ⑭ ビッグウェイブ狙うサーファー 周天
雑 ⑮ ロトセブンネットで買って夢を見る 春芳
雑 ⑯ リモート授業寝せぬ技聞く 茄言
春・花 ⑰ 花見酒ZOOMで飲んでくだを巻き 周天
春 ⑱ 枝垂れ柳を揺らす人並み 春芳
《名残折表》
春 ⑲ 初虹に親子ではしゃぐ帰り道 茄言
雑 ⑳ 新潮文春中吊り競う 周天
雑 ㉑ 満員の車内でマスク外す男(ひと) 春芳
恋 ㉒ 会釈した顔初恋の彼 茄言
恋 ㉓ 結ばれぬ定めと古老語り継ぎ 周天
恋 ㉔ 窓を打つ風足音に似て 春芳
雑 ㉕ 黒船が来ねば変わらず過ぎる日々 茄言
雑 ㉖ 驚天動地翔平上陸 周天
雑 ㉗ 空港でスター見かけて胸躍る 春芳
秋 ㉘ 翼下(よくか)黄金のすすき野なびく 茄言
秋・月 ㉙ アフガンを出でて故国の月の下 周天
秋 ㉚ 惨い戦禍を綴る秋の夜 春芳
《名残折裏》
雑 ㉛ 北の空不動ポラリス輝いて 茄言
雑 ㉜ 地軸を背中(せな)に歩み進める 周天
雑 ㉝ 右膝の痛みこらえてラストラン 春芳
春 ㉞ 伴走せんと追う風光る 茄言
春・花 ㉟ 海坂を訪ねて巡る花のあと 春芳
春 ㊱ 思い出たどる日差し麗らか 周天
自 令和三年 八月二十三日
至 同 八月二十九日