027 『任を了えし桜紅葉の巻』
三吟歌仙 周天・茄言・春芳
『任を了えし桜紅葉の巻』㉗
《初折 表》
冬 ① 任を了え桜紅葉の落ちにけり 周天
冬 ② 積もる小道に霜の踏み音 茄言
雑 ③ エブリデイ朝は散歩と心得て 春芳
雑 ④ 新たなルート地図に書き込む 周天
秋・月 ⑤ 月光の淡さが誘う遠回り 茄言
秋 ⑥ スーツの襟に赤い羽根刺し 春芳
《初折 裏》
秋 ⑦ ネクタイを緩め仲間と今年酒 周天
雑 ⑧ 雲の切れ目の空の青さよ 茄言
恋 ⑨ 絹肌の影追いかけて夢一夜 春芳
恋 ⑩ 解かれた帯と紐の戯れ 周天
恋 ⑪ 始発でと名前も告げず去った人 茄言
雑 ⑫ アムステルダム鞄一つで 春芳
夏・月 ⑬ デルフトの運河に浮かぶ夏の月 周天
雑 ⑭ ノーラン描くダンケルクの海 茄言
雑 ⑮ ありえない奇跡信じて祈る浜 春芳
雑 ⑯ 遠き島より流され着いて 周天
春・花 ⑰ いつの日か実生は育ち花纏う 茄言
春 ⑱ 外套脱いでいそしむ整枝 春芳
《名残折表》
春 ⑲ シャボン玉垣根を越えて七つ八つ 周天
雑 ⑳ 刹那に消えて残す濡れ跡 茄言
雑 ㉑ 労せずに10億つかむ夢をみて 春芳
恋 ㉒ そっと支える心けなげに 周天
恋 ㉓ 出かけ際糸くず払い送る声 茄言
恋 ㉔ 目配りで知る愛の輝き 春芳
雑 ㉕ 太平の御代に伊賀者暗躍し 周天
雑 ㉖ 印籠出せど止まぬ争い 茄言
秋・月 ㉗ 雲流れ流浪の月と見えし夜 春芳
秋 ㉘ ボヘミアの森音澄みわたる 周天
秋 ㉙ クイーンを聞いて気づけば秋の暮れ 茄言
雑 ㉚ 欧州巡る哀愁の旅 春芳
《名残折裏》
雑 ㉛ 本当の自分探してマルセイユ 周天
雑 ㉜ 聖堂見上げ歩み始める 茄言
雑 ㉝ 寂聴の般若心経借りて読む 春芳
春 ㉞ 嵯峨野に鐘の遠く霞んで 周天
春・花 ㉟ 今は亡き姉の形見の花絣 春芳
春 ㊱ 春の日和に浮かぶ面影 茄言
自 令和三年 十一月 七日
至 同 十一月 十一日