三吟歌仙         

035 『淡雪が降る夜の巻』


      春芳・周天・茄言三吟歌仙35
      『淡雪が降る夜の巻』


《初折表》
春    ① 淡雪が庭先飾る夕べかな         春芳

春    ②  ガラス障子に雛のぼんぼり       周天

春    ③ のどかさに一機が空気震わせて      茄言

雑    ④  五輪の裏で消え去る平和        春芳

秋・月  ⑤ 道長の見し月仰ぐクレムリン       周天

秋    ⑥  稲妻落ちて我に返れと         茄言

《初折裏》
秋    ⑦ ママチャリで下る坂道秋の風       春芳

雑    ⑧  気まぐれに出る膝の疼痛        周天

雑    ⑨ いちばちで打ったボールが試合決め    茄言

夏・恋  ⑩  ビキニ姿のエールの御陰        春芳

夏・恋  ⑪ ミノルタで木下闇の盗み撮り       周天

恋    ⑫  濡れ髪拭う仕草惑わす         茄言

冬・月  ⑬ 湯屋の窓透けて見えるは冬の月      春芳

冬    ⑭  殺生石を霰打ち責め          周天

雑    ⑮ 定年に近づき本音部下が言い       茄言

雑    ⑯  メッセンジャーに転身図る       春芳

春・花  ⑰ 花びらの舞うを切り裂き疾駆して     周天

春    ⑱  光風浴びて走る千里浜         茄言

《名残折表》
春    ⑲ 陽炎に揺れる波間に舟一艘        春芳

雑    ⑳  借金返し病気乗り越え         周天

雑    ㉑ 龍の巣のむこうに目指す空の城      茄言

雑    ㉒  耳を澄ませば猫の鳴く声        春芳

恋    ㉓ 夕まぐれ三毛を飼う女爪弾いて      周天

恋    ㉔  遠回りして見る君の家         茄言

恋    ㉕ さりげなく腕を絡めて歩くパリ      春芳

秋・恋  ㉖  セーヌの霧に抱擁は消え        周天

秋・月  ㉗ 留まりて何を言いたい昼の月       茄言

秋    ㉘  果てなき瑠璃の秋空眺め        春芳

秋    ㉙ 鳥渡る追われし身ではなきものを     周天

雑    ㉚  かしこき長(おさ)が行き先定め     茄言

《名残折裏》
雑    ㉛ 佐殿(すけどの)と共に流浪の旅に出て   春芳

雑    ㉜  弥次喜多道中前途は多難        周天

雑    ㉝ 浮上するはずのリニアが足踏みし     茄言

春    ㉞  工事現場に春めく余寒         春芳

春・花  ㉟ 待ってると花満開の庭見せて       茄言

春    ㊱  弥生の郷は一家団欒          周天

  自令和四年三月五日
  至 同  三月十日