039 『植え終えし田面の巻』
周天・茄言・春芳三吟歌仙39
『植え終えし田面の巻』
《初折表》
夏 ① 植え終えし田面に雲の浮かびけり 周天
夏 ② 薫る風受け苗泳ぐ空 茄言
雑 ③ 傘を手に午後から雨と心得て 春芳
雑 ④ 石畳の道紳士を気取る 周天
秋・月 ⑤ 満月にムーンウォークまねてみる 茄言
秋 ⑥ 律の調べにリズム合わせて 春芳
《初折裏》
秋 ⑦ 一切を捨てて身軽に秋遍路 周天
雑 ⑧ 己の影を友として行く 茄言
雑 ⑨ 公園のベンチの上で旅終えて 春芳
恋 ⑩ 心を込めて作る弁当 周天
恋 ⑪ 包丁の音で目覚めるありがたさ 茄言
恋 ⑫ 肩に甘えたあの頃のこと 春芳
冬・月 ⑬ 見上げれば涙に曇る冬の月 周天
雑 ⑭ 眠る兵士をほのかに照らす 茄言
雑 ⑮ 借りて読む『さらばモスクワ愚連隊』 春芳
雑 ⑯ ジャズに浸ってマールボロ吸う 周天
春・花 ⑰ 花揺らす雨滴に合わせカウントし 茄言
春 ⑱ パリの街角燃える陽炎 春芳
《名残折表》
春 ⑲ 復活祭サクレクールの低き空 周天
雑 ⑳ はしゃぐ小鳥が窓辺で遊ぶ 茄言
雑 ㉑ フェルメール真似て描いてほくそ笑む 春芳
雑 ㉒ 技を尽くして欺し欺され 周天
恋 ㉓ 素のままの自分を見せて気持ち聞く 茄言
恋 ㉔ 青い瞳が美し過ぎて 春芳
恋 ㉕ 友情のはずがいつしか熱き胸 周天
雑 ㉖ 本場野球に二刀流燃え 茄言
雑 ㉗ 人生の黄昏時にボランティア 春芳
秋・月 ㉘ 同好の士と有明の月 周天
秋 ㉙ 澄む水に映る猫背に背を伸ばし 茄言
秋 ㉚ 眠気覚まして夜学に通う 春芳
《名残折裏》
雑 ㉛ リュウグウの砂に技術を結集し 周天
雑 ㉜ 命の起源ロマン果てなく 茄言
雑 ㉝ アミノ酸摂取方法考えて 春芳
春 ㉞ 父祖伝来の畑鋤く人 周天
春・花 ㉟ 散る花の慌ただしさは我に似て 春芳
春 ㊱ 若芝駆ける子らに微笑む 茄言
自令和四年六月二十一日
至 同 六月二十七日