三吟歌仙         

041 『月光の巻』

         春芳・周天・茄言 三吟歌仙41
         『月光の巻』

  《初折 表》
秋・月    ① 灯り消し月の光で弾くピアノ         春芳 

秋      ②  夜長に飽かず辿る旋律           周天

秋      ③ 秋茜風と遊んで舞群れて           茄言

雑      ④  暗く危険な迷路すり抜け          春芳

雑      ⑤ スナイパー細巻煙草くゆらせる        周天

雑      ⑥  鏡に映るわれはツールか          茄言

  《初折 裏》
夏      ⑦ 旅先でひまわりの丘見渡して         春芳

夏・恋    ⑧  夏の日ふたり身を潜ませる         周天

恋      ⑨ 昼休み書架の向こうと交わす笑み       茄言

恋      ⑩  ページに挟む欠けたマニキュア       春芳

雑      ⑪ 校庭にタイムカプセル掘り返し        周天

雑      ⑫  見上げた赤城舞えたかと問う        茄言

冬・月    ⑬ レマン湖のほとりを照らす冬の月       春芳

冬      ⑭  ユングフラウにスキー担いで        周天

雑      ⑮ 山を越えトラップ一家目指す土地       茄言

雑      ⑯  雲間に浮かぶメリーポピンズ        春芳

春・花    ⑰ 千本の花を伝いて奥の峰           周天

春      ⑱  遠く眺める曲水の宴            茄言

  《名残折表》
春      ⑲ 平安の雅をまねて雛流す           春芳

雑      ⑳  町屋覗けば洒落たカフェバー        周天

雑      ㉑ 酔うほどにバックナンバー聞きほれて     茄言

雑      ㉒  今は納戸に古いステレオ          春芳

恋      ㉓ いとはんに付け文をする蔵の陰        周天

恋      ㉔  刹那赤らむ頬に眠れず           茄言

夏・恋    ㉕ 教室で君にみとれる夏季講座         春芳

雑      ㉖  指導者の過去言えぬ日々あり        周天

秋・月    ㉗ 満月に狼となる血筋引く           茄言

秋      ㉘  色なき風が吹き抜ける森          春芳

秋      ㉙ 稲の波うねりの中へコンバイン        周天

雑      ㉚  日差しに露わ虫飛び跳ねて         茄言

  《名残折裏》
雑      ㉛ さりげなくステップ踏んで帰る道       春芳

雑      ㉜  チャプリンまねてひとりおどける      周天

雑      ㉝ ポツポツと街の灯消えて夢の中        茄言

春      ㉞  うつらうつらと麗らかな朝         春芳

春・花    ㉟ 花咲かす山の恵みの水光る          茄言

春      ㊱  坂東太郎ほとばしる春           周天

        自  令和四年  十月   十八日
        至   同    十月  二十三日