050 『風の歌聞く詩人の巻』
春芳・茄言・周天 三吟歌仙 50
『風の歌聞く詩人の巻』
《初折 表》
冬 ① 枯れ野にて風の歌聞く詩人かな 春芳
冬 ② 眠る山から夢の切れ端 茄言
雑 ③ 寒村のロケ地はしばし賑わって 周天
雑 ④ 田舎芝居でブギウギ踊る 春芳
秋・月 ⑤ 満月に木星ピアス似合う夜 茄言
秋 ⑥ ワイン祭りは香り満たされ 周天
《初折 裏》
秋 ⑦ うそ寒き朝に飛び起きイタリアへ 春芳
恋 ⑧ トレヴィで出会う破顔の二人 茄言
恋 ⑨ 永遠(とわ)の愛コイン一枚ずつ出して 周天
夏・恋 ⑩ セピア色した夏の日の恋 春芳
雑 ⑪ 断捨離のはずがアルバム見て暮れる 茄言
雑 ⑫ 騎馬戦に沸く深夜放送 周天
秋・月 ⑬ 煌々とガザの瓦礫を照らす月 春芳
秋 ⑭ 何の知らせか秋の雷鳴 茄言
秋 ⑮ 地の縛り無く上空を渡り鳥 周天
雑 ⑯ 海図片手に大陸目指す 春芳
春・花 ⑰ 人知れず名もなき花が咲き誇る 茄言
春 ⑱ 駱駝にゆられ先は陽炎(かげろ)い 周天
《名残折表》
春 ⑲ 行く春を惜しむが如き涙雨 春芳
恋 ⑳ 上げた裾から白い足首 茄言
恋 ㉑ すっぴんの顔あどけなく腕の中 周天
恋 ㉒ 溢れる思い君にぶつけて 春芳
雑 ㉓ 満塁に死球サヨナラ歓喜の輪 茄言
雑 ㉔ 人事に光と影の交錯 周天
冬 ㉕ 総務部の窓から見える冬木立 春芳
冬 ㉖ 落葉踏む音足取り軽く 茄言
冬・月 ㉗ 月凍てつ屋台のおでん熱燗で 周天
雑 ㉘ ぬる湯につかり描くシナリオ 春芳
雑 ㉙ 毎日が主演監督自主映画 茄言
夏 ㉚ 灼けつく浜辺息を弾ませ 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 何気なく上着を脱いで深呼吸 春芳
雑 ㉜ 決めたコースを一人で走る 茄言
雑 ㉝ 年下の訃報家族葬とあり 周天
雑 ㉞ 再会約す旅立つ友と 春芳
春・花 ㉟ 宿願の峠を越えて花の郷 周天
春 ㊱ 勇み立ち入る春の彩り 茄言
自 令和五年 十一月 八日
至 同 十一月 十四日