三吟歌仙         

059『光輝く枯れ野の巻』(最新巻)

  春芳・周天・茄言 三吟歌仙59
  『光輝く枯れ野の巻』

《初折 表》
冬   ① 見渡せば光輝く枯れ野かな      春芳
冬   ②  丹頂鶴の細き首筋         周天
雑   ③ 格子戸の向こうに子らの声がして   茄言
雑   ④  玄関先で立ち話する        春芳
秋・月 ⑤ 尊攘か佐幕か月に黒き影       周天
秋   ⑥  稲妻落ちて切られ役者に      茄言
《初折 裏》
秋   ⑦ 思秋期を聞いて涙腺緩む夜      春芳
恋   ⑧  頬にひとすじそっと口づけ     周天
恋   ⑨ プロポーズ遠く汽笛が背を押して   茄言
恋   ⑩  車窓に映るロングレイヤー     春芳
雑   ⑪ パトカーの犯人顔を伏せもせず    周天
雑   ⑫  樹林の闇が真相隠す        茄言
夏・月 ⑬ ハワイ沖海照らしたる夏の月     春芳
雑   ⑭  アラモアナにも円安の波      周天
雑   ⑮ 浮き沈む若き感性懐かしく      茄言
雑   ⑯  イノベーションをテーマにすえて  春芳
春・花 ⑰ もう一度ナンバーワンへ花舞台    周天
春   ⑱  祭り太鼓に春風踊る        茄言
《名残折表》
春   ⑲ 薄氷跳ね上げ進む人の群れ      春芳
雑   ⑳  熱気渦巻く炭鉱の町        周天
雑   ㉑ 手探りで青春の門くぐり抜け     茄言
雑   ㉒  戒厳令の夜は空しく        春芳
恋   ㉓ 身をひそめ温もり交わす肩と肩    周天
恋   ㉔  先に逝くなと老いて寄り添う    茄言
恋   ㉕ 優しくて悲しい愛に包まれて     春芳
雑   ㉖  戦力外の選手見送る        周天
秋・月 ㉗ 裏みせずただ満ち欠けて語る月    茄言
秋   ㉘  正午の空に走る稲妻        春芳
秋   ㉙ 豊作に追い風米価はね上がり     周天
雑   ㉚  巨人の星に左門が挑む       茄言
《名残折裏》
雑   ㉛ 城郭を築いて後の世に伝え      春芳
雑   ㉜  武道館での初コンサート      周天
雑   ㉝ 夢殿へ誘う伽藍のついじ塀      茄言
春   ㉞  ギター抱えて春の野を行く     春芳
春・花 ㉟ 咲き競う花の奏でるアルペジオ    茄言
春   ㊱  木々の小鳥も和して囀る      周天

  自  令和六年十二月二十一日
  至   同  十二月二十七日