068『風が寄り添う夕べの巻』
春芳・茄言・周天 三吟歌仙 68
『風が寄り添う夕べの巻』
《初折 表》
春 ① 麗らかな風が寄り添う夕べかな 春芳
春 ② 枝を揺らして芽吹きの合図 茄言
春 ③ 選挙カー春の粉塵舞い上げて 周天
雑 ④ 立会人の重責担う 春芳
冬・月 ⑤ 雪だるま月夜にじっと庭の番 茄言
冬 ⑥ 北極圏の寒波襲来 周天
《初折 裏》
雑 ⑦ モンゴルの歴史を語る老教師 春芳
雑 ⑧ 話術で誘うそこは平原 茄言
恋 ⑨ じゃじゃ馬が恥ずかしそうに頬を染め 周天
夏・恋 ⑩ セピアカラーの君がいた夏 春芳
夏・恋 ⑪ 虹見上げ色を数える二人して 茄言
雑 ⑫ 紺屋づとめの指先の藍 周天
秋・月 ⑬ 月眺めワインを嗜む贅沢さ 春芳
秋 ⑭ 今や高値の新米価格 茄言
秋 ⑮ 草紅葉さらに至仏へ腹すかせ 周天
雑 ⑯ サイクリングで登る坂道 春芳
春・花 ⑰ 峠から見下ろす里に花の雲 茄言
春 ⑱ 鶯のこえ谷を渡って 周天
《名残折表》
春 ⑲ 春雷が妖しく光る昼下がり 春芳
雑 ⑳ 皇居ランするキャリア官僚 茄言
雑 ㉑ ほぼ互角レース展開中盤へ 周天
冬 ㉒ ミラノの街に木枯らし吹いて 春芳
冬・恋 ㉓ 寒いかと君をコートに抱き入れて 茄言
冬・恋 ㉔ 雪つもる夜の閨(ねや)の語らい 周天
恋 ㉕ 乱れ髪鏡に映し櫛でとく 春芳
雑 ㉖ 逆さ富士消す風の気まぐれ 茄言
秋・月 ㉗ 海底(うなぞこ)の如き樹林に月は射し 周天
秋 ㉘ 菊投げ入れて両手併せる 春芳
秋 ㉙ 新そばを拝んで食す信州路 茄言
雑 ㉚ 齢(よわい)延ばすか「亀齢」ぐびりと 周天
《名残折裏》
雑 ㉛ 乗り遅れベンチで一人仮眠する 春芳
雑 ㉜ 寝覚めて気づく物の怪館 茄言
雑 ㉝ 生首を数えて赤き舌の先 周天
春 ㉞ 色濃く描く春の山々 春芳
春・花 ㉟ 麓から綾を織りなす花の帯 周天
春 ㊱ 覆う霞は淡き羽衣 茄言
自 令和八年二月四日
至 同 二月十日