三吟歌仙         

047 『夕立の去りゆく空の巻』

     春芳・周天・茄言 三吟歌仙47
     『夕立の去りゆく空の巻』
                 
  《初折 表》
夏    ① 夕立の去りゆく空の青さかな       春芳

夏    ②  田の面に映る虹の架け橋        周天

雑    ③ ペダル漕ぎ渡るしまなみ風切りて     茄言

雑    ④  書棚の隅に「かのこ繚乱」       春芳

秋・月  ⑤ 月天心縄文土器の炎(ほむら)立つ    周天

秋    ⑥  遠く花火の音に震えて         茄言

  《初折 裏》
秋    ⑦ シャンゼリゼ人もまばらな秋の暮れ    春芳

恋    ⑧  アンリ・マティスを想わせるひと    周天

恋    ⑨ 告げて待つ高まる胸のテラス席      茄言

恋    ⑩  微笑み浮かべロングドレスで      春芳

雑    ⑪ 上映の後に拍手は鳴りやまず       周天

雑    ⑫  仕事メールが余韻かき消す       茄言

冬・月  ⑬ スペインの広場を照らす冬の月      春芳

雑    ⑭  クボのゴールで話題持ち切り      周天

雑    ⑮ 街望むグエルの園の色世界        茄言

雑    ⑯  砂糖まぶしたタルト菓子買う      春芳

春・花  ⑰ 花も良しだんご又良しお堀端       周天

春    ⑱  あてなく歩く道は麗らか        茄言

  《名残折表》
春    ⑲ 出稼ぎの父が帰りて春となる       春芳

恋    ⑳  寄り来る妻の肩の温もり        周天

恋    ㉑ 触れた手に共に経た日々皺教え      茄言

恋    ㉒  広瀬アリスを胸に潜めて        春芳

雑    ㉓ 社長秘書裏には別の顔があり       周天

雑    ㉔  三千過ぎてターボの加速        茄言

夏    ㉕ フェラーリで夕日追いかけ夏の海     春芳

夏    ㉖  青葉の似合う露座の大仏        周天

夏・月  ㉗ 熱帯夜微笑むごとき涼し月        茄言

雑    ㉘  雨降る浜でカニを見つける       春芳

雑    ㉙ 繋がれし小舟の姿今日は無く       周天

雑    ㉚  蟻乗せ浮かぶ笹の葉どこへ       茄言

  《名残折裏》
雑    ㉛ 立ち止まり川のせせらぎ聞く夕べ     春芳

雑    ㉜  会議の熱も冷めやらぬまま       周天

雑    ㉝ 勝ち負けに老いてこだわる朝テニス    茄言

春    ㉞  シャワーを浴びて冴え返る日々     春芳

春・花  ㉟ 今の身を花の盛りと仰ぐ空        茄言

春    ㊱  夢を託して飛ばせ風船         周天

   自  令和五年  六月二十一日
   至   同    六月二十八日