三吟歌仙         

048 『新涼の樹林の巻』

    周天・春芳・茄言三吟歌仙48
        『新涼の樹林の巻』


《初折表》  
秋   ① 新涼や樹林に友の声響く      周天

秋・月 ②  見上げる空に十六夜の月     春芳

秋   ③ 乾杯のジョッキの先に星飛びて   茄言

雑   ④  ダークマターの謎に迫れり    周天

雑   ⑤ 精密な計算重ね挑む闇       春芳

雑   ⑥  怖さに勝る未知の誘惑      茄言


《初折裏》
夏   ⑦ 丑三つの廃病院で肝試し      周天

夏・恋 ⑧  驚く女を抱きしめた夏      春芳

恋   ⑨ 残り香に募る思いが溢れ出す    茄言

恋   ⑩  蒲団引き寄せ嗅ぐも未練な    周天

雑   ⑪ 感傷に浸って書いた私小説     春芳

雑   ⑫  無人の駅に一人降り立ち     茄言

冬・月 ⑬ 月眺めストーブ列車カップ酒    周天

雑   ⑭  横綱倒し大関となる       春芳

雑   ⑮ 言い慣れぬ四文字熟語しぼり出し  茄言

春   ⑯  草萌える野に裸馬駆る      周天

春・花 ⑰ 咲く花を踏み散らしたる芝の上   春芳

春   ⑱  空に悠然春の雲浮く       茄言

《名残折表》
雑   ⑲ 入り口は二度と得られぬユートピア 周天

雑   ⑳  ロンドン塔に幽閉されて     春芳

雑   ㉑ ゴンドラで見下ろし渡るテムズ川  茄言

恋   ㉒  サリーをまとう深きまなざし   周天

恋   ㉓ めくるめく愛の暮らしに身を委ね  春芳

恋   ㉔  別れの予感胸に閉じ込む     茄言

雑   ㉕ 勝ち上がり一戦ごとに力つけ    周天

雑   ㉖  星が輝く横浜の夜        春芳

秋・月 ㉗ 観覧車照らす満月美酒の酔い    茄言

秋   ㉘  夜長にそぞろ歩く街角      周天

秋   ㉙ ひとときを故郷で遊ぶ盆帰り    春芳

秋   ㉚  わびて引き抜く墓の秋草     茄言

《名残折裏》
雑   ㉛ 痛恨のミスは未だに言い継がれ   周天

雑   ㉜  メジャー選手のそれも要件    春芳

雑   ㉝ 黙々とプレーで見せるいぶし銀   茄言

春   ㉞  働き蜂の羽音かすかに      周天

春・花 ㉟ 粧いし花の小径に迷い込み     茄言

春   ㊱  光輝く南国の春         春芳

       自令和五年八月 八日
       至  同  八月十四日