三吟歌仙         

052 『地蔵の笑みを隠す柴焼きの巻』

茄言・周天・春芳 三吟歌仙 52
『地蔵の笑みを隠す柴焼きの巻』

《初折 表》
春   ① 柴焼きのけむに地蔵の笑み隠れ    茄言

春   ②  永き日子らの尽きぬしりとり    周天

春   ③ 陽炎に揺れる少年目で追って     春芳

雑   ④  渓谷またぐ吊り橋を行く      茄言

秋・月 ⑤ スナイパーはいづこ月面仰ぎ見る   周天

秋   ⑥  狙い定めて秋の国会        春芳

《初折 裏》
秋   ⑦ 虫の音が重なり庭を震わせて     茄言

雑   ⑧  危機乗り越える市民楽団      周天

雑   ⑨ 大阪で少女歌劇を見る夕べ      春芳

恋   ⑩  我待つ姿陰で眺める        茄言

恋   ⑪ 後ろから目隠し髪にかかる息     周天

恋   ⑫  セピア色した在りし日の笑み    春芳

夏・月 ⑬ 犬の名の岩ある愉快夏の月      茄言

夏   ⑭  ネズミハナビに追い回されて    周天

雑   ⑮ なぶられて猫に食われる川魚     春芳

雑   ⑯  遡上の群れの種を継ぐ強さ     茄言

春・花 ⑰ 染井村千代に誇れる花開き      周天

春   ⑱  庭木楽しむ麗らかな朝       春芳

《名残折表》
春   ⑲ 春陽うけ帰船になびく大漁旗     茄言

恋   ⑳  浜で新妻声を弾ませ        周天

恋   ㉑ イタリアのベニスで書いたラブレター 春芳

恋   ㉒  焦がれる心ドロミテ越えて     茄言

雑   ㉓ 今宵また前人未踏の歩を進め     周天

冬   ㉔  指先冷えて感覚もなし       春芳

冬   ㉕ 雪積もる老松の下雪だるま      茄言

雑   ㉖  もうありのまま自分信じて     周天

秋・月 ㉗ アニメ観て月が導く異世界へ     春芳

秋   ㉘  霧に行く末見えぬこの星      茄言

秋   ㉙ 朝露の玉に万物映り出づ       周天

雑   ㉚  盤上に咲く奇跡の一手       春芳

《名残折裏》
雑   ㉛ ラマヌジャン女神のお告げ数理式   茄言

雑   ㉜  黄金比率四川ラーメン       周天

雑   ㉝ 料亭で密談交わす幹事長       春芳

春   ㉞  さえずり真似て口笛返す      茄言

春・花 ㉟ うすべにの夕日に映える花の影    春芳

春   ㊱  時の流れを惜しむ春宵       周天

      自 令和六年 二月 四日
      至  同   二月 十日