三吟歌仙         

060 『散歩の背中の巻』(四吟)

  飛鳶・周天・春芳・茄言 四吟歌仙
      三山連句会 第60巻
   『散歩の背中の巻』

《初折 表》
春   ① 春光や散歩の背中暖かく     飛鳶
春   ②  赤城はるかに見やる末黒野   周天
春   ③ 麗らかな日差しの中でごろ寝して 春芳
雑   ④  枕振りつつ寄席の客読む    茄言
秋・月 ⑤ 喧噪を逃れて一人月の宿     周天
秋   ⑥  紅葉燃え立つ涸沢カール    飛鳶

《初折 裏》
秋   ⑦ 流れ星夢で掴んで明ける朝    茄言
恋   ⑧  寄り添う女の眼差し揺れて   春芳
夏・恋 ⑨ 離れゆく横顔涼し空見つめ    飛鳶
夏   ⑩  バイト三昧灼けた砂浜     周天
夏   ⑪ 潮騒の響きゆかしい神の島    春芳
雑   ⑫  渡りの蝶は浅葱色して     茄言
秋・月 ⑬ 月に目を伏せて凶状持ちの旅   周天
秋   ⑭  蔦の絡まる駒形茂兵衛     飛鳶
秋   ⑮ 綱賭けて千秋楽の巴戦      茄言
雑   ⑯  天井桟敷騒ぐ人々       春芳
春・花 ⑰ センバツで夢のようだよ花吹雪  飛鳶
春   ⑱  風光る中の78球       周天

《名残折表》
春   ⑲ 暖かな夜にアルバム整理して   春芳
雑   ⑳  肩組む友と語る術なし     茄言
雑   ㉑ 千鳥足ゴールいつものスナックで 周天
冬   ㉒  凍てつく朝よ今日は月曜    飛鳶
冬・恋 ㉓ 駆け寄りて白き吐息のいとおしさ 茄言
冬・恋 ㉔  樹氷見つめる長い黒髪     春芳
夏・恋 ㉕ 物干しの黄色い水着眩しくて   飛鳶
雑   ㉖  煙草くゆらせ気取るアンニュイ 周天
秋・月 ㉗ 窓を開け月差し入れし四畳半   春芳
秋   ㉘  長夜にルート2とはなにかと  茄言
秋   ㉙ 無理通るこの世無言で冬支度   周天
秋   ㉚  何時か破綻の破れ芭蕉見る   飛鳶

《名残折裏》
雑   ㉛ ほころびを繕い直す針と糸    茄言
雑   ㉜  祖母の形見を孫子受け継ぐ   春芳
冬   ㉝ 端切れ今温か袢纏身を包む    飛鳶
春   ㉞  徹夜も楽し卒業試験      周天
春・花 ㉟ 年経ても恩師教え子花の宴    茄言
春   ㊱  春が微笑む懐かしき日々    春芳

自  令和七年二月三日
至   同  二月十日